日本酒をテーマに卒論を書くために必要な3つの視点

2016-09-13

「飲み会やコンパが楽しくて仕方なかった」「大学で幸か不幸かお酒の味を覚えてしまった」・・・ちょっと不純な動機だと思われる方も見えますが、ご自身の経験や思い出からお酒をテーマに卒論を選ぶのは立派な理由の一つです。
では、お酒をテーマにする場合にどうすればいいでしょうか?今日はその一例をあげます。

最近では若者の日本酒離れが進んでいると言われています。
その原因の一つとして挙げられるのは、若者が日本酒では他の酒を好むようになってきていることです。

これに関する研究も行われており、日本酒、焼酎、ビール、ワイン、ウイスキーを対象にしたイメージ調査が行われています。
この調査では、カジュアル(日常的で親近感のあるイメージ)、ビジュアル(見た目に訴えかけるイメージ)、リラックス(気持ちに訴えかけるイメージ)、リスク(危険なイメージ)という四つの軸を設定してそれぞれのお酒がどの位置に置かれているのかが明らかにされています。
それによると、日本酒は、ビジュアル、カジュアルのようなイメージはさほど持たれていないものの、その一方でリスクやリラックスのイメージが根付いているそうです。
特にリラックスのイメージが強いようで、日本酒は寛ぎの場で飲まれるような印象が持たれているようです(富川、2008)。

確かに、ワインやウイスキーのようなお酒は西洋風な雰囲気がありますし、ビールは日本では飲み会の定番として定着しています。

ここで疑問となるのが、「なぜ日本酒ではなく他の酒が選ばれるのか」ということです。
もちろん日本酒の味も関係しているのでしょうが、それ以上に日本酒がもつ歴史が関係しているように思われてなりません。
確かに、五島ほか(2012)では日本酒が不人気である理由として「においがきつい」「近寄り難い」などが挙げられていますが、その他の要因もあるかもしれません。
そこで、このような問題意識を踏まえたテーマで卒論を書くことができそうです。

このテーマで卒論を書くとき、次の三つの視点が必要になります。
(1)日本酒製造の歴史
(2)日本酒文化の変容
(3)現代における日本酒の位置づけ

論文を書くときには議論の筋道を予め考えておくと執筆が容易になります。
今回のケースでは、「背景→原因→結果」という枠組みで議論が組み立てられそうです。

日本では平安時代から日本酒の製造がされており、京都の朝廷で嗜まれていました。
そのような日本酒消費の事情からまずは京都近郊で日本酒の製造が本格的に行われるようになりました。
現在でも京都伏見は日本酒製造で有名な土地となっています。
その後、江戸時代には日本酒の醸造や貯蔵の技術が飛躍的に進歩したこともあって大衆にまで普及していきました。
また江戸時代の石高制が整備され、米から作られる日本酒は各藩の財政にも大きな影響を及ぼしたようです。

さらに明治時代には日本酒は国策的な産業として位置付けられるようになり、高い税率が掛けられたこともあり国の財源としても有力なものとなりました。

このような背景からは、日本酒が近世・近代日本では広く好まれ日常的に飲まれていたことがわかります。
それでは、どのような原因から「若者の日本酒離れ」というような現在の状況へと変化していったのでしょうか。

1960年代前後の高度経済成長期には日本酒は依然として日本酒が人気を博していましたが、バブル経済が崩壊するころを境にして人々が酒に対する低価格志向を強めていきました。
そうした中で台頭してきたのが輸入量が増加してきたワインやウイスキー、また低価格で販売される発泡酒や缶チューハイなどでした。
このような原因によって、日本酒は日本における主要な地位を失っていきました。

その結果として、現れたのが冒頭でも述べたような若者の日本酒離れです。

以上からは、若者の日本酒離れの原因として味や匂い、イメージの他に経済的要因も関係していることが明らかになりました。
このテーマのように、定性的、定量的な資料を基に身近な変化の本当の理由に迫るような卒論は、書いていても面白いものになるでしょう。

参考文献:
富川泰敬、2008年「多変量解析による酒類の消費者ニーズ分析 若年層消費者へのアンケートに基づく考察」『税大ジャーナル』9
五島淑子・石田佳菜絵ほか、2012年「大学生における日本酒への関心」『山口大学教育学部広報部 研究論叢』62

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