地球外生命体について~卒論で取り扱うには?~

2017-06-14

NASAが記者会見を開き、土星のまわりを周回する衛星「エンケラドス」で地表の割れ目から出ているガスから水素の分子が検出されたと、発表しました。
そこから衛星の地下にある海の底で、生命にエネルギーを供給する温度の高い熱水が噴き出していると考えられ、NASAは微生物などの生命を育める環境があるかもしれないとしています。

なぜ水素分子の検出から、「エンケラドス」は生命が育める環境にあると言えるのでしょうか、そもそも生命が育める環境とは一体どのような環境なのでしょうか。
このようなニュースから浮かび上がる疑問を掘り下げることで、最先端の研究に触れることができ、さらにその分野の研究者が前提としている知識を得ることができます。

今回は以上の二つの疑問について考えていくことで、卒論として取り扱う方向性を見出していきます。

まずは生命が育める環境の条件についてです。著名な研究機関、研究者はそのような環境について以下のように述べています。

「惑星に生命が発生するためには、さまざまな条件が必要です。もっとも基本的な条件としては、2つあります。それは、太陽光や地熱などのエネルギー源が存在すること、そして、もう一つは、なによりなくてはならないもの、液体の水の存在です。地球上の生物の体がほとんど水でできていることからも、水は生命に必要不可欠であることがわかります。」
(JAXA SPACE INFORMATION CENTER)

「生命が存在できるだろう惑星には、それを満たすためのいくつかの条件がある。そこには液体の水の存在、生物が代謝や繁殖を行うときに必要な成分の存在、生物相が得られるエネルギー源、それに生物相が継続的に存在できる十分安定な環境などが含まれている。」
(ノーベル生理・医学賞受賞者GerogeWald)

JAXAによると液体の水と熱エネルギーが生命に必要な基本的な条件だそうです。
この基本条件を踏まえると、現在の地球外生命体の探し方を二種類の手法に分けて考えることができます。

一つ目は地球と似た環境にある系外惑星を探し、研究する手法。
この手法は、20世紀末から21世紀にかけて急速に観測技術が向上し、多くの太陽系外の惑星が発見されたことによって発達しました。
現在までにいくつかの地球類似惑星が観測されていますが、最も近いもので4.24光年とされています。(英クイーンメアリー大)
4.24光年というのは人類史上最速のロケットで11万年程かかるそうです。
したがってこの手法では、さらに近くの地球類似惑星を発見するか、遠くからでも生命の判断ができる技術、もしくは高速での移動技術のどちらかの革新を待たなくてはならないです。

二つ目は地球とは異なるエネルギー源(恒星以外からのエネルギー供給)によって液体の水を湛える惑星、衛星を探し、研究する手法。
一つ目の手法と、この手法の現時点での大きな違いは、観測対象との距離の違いです。
土星探査機カッシーニは地球を出発してから金星、木星を経由し、およそ7年で土星にたどり着きました。
土星衛星エンケラドスは本来、太陽との距離から考えると、水が存在していたとしても全て氷の状態であると考えるのが自然です。
ところが2014年に液体の水の存在が探査機カッシーニによって発見されました。
この発見から水を液体にするエネルギー源は土星の引力であると推測されました。

以上のように、生命を育める環境は地球を基準に条件が決まっています。
どちらの手法も地球に類似した環境を探すという点で共通しています。

続いて、なぜエンケラドスからの水素分子検出が生命存在への期待の高まりへとつながったのだろうかという疑問を解いていきます。

地球の海底にある火山では、鉄やマグネシウムを豊富に含む岩石が噴出しています。
岩石のミネラルが水分子を取り込む過程で、水素が副産物として放出されます。
メタン細菌などの微生物はこの水素をエネルギー源に、代謝を行っています。

地球では、この海底火山は栄養の宝庫で、特にそこに含まれる水素は微生物にとって非常に良質なエネルギーです。
地球での生命誕生の場所はこの海底火山であるとされています。
したがって、この水素検出は、エンケラドスに生命誕生の環境が存在することを示唆しているのです。

学術的なニュースを掘り下げながら、卒論に取り組むのも堅実な方法と言えるでしょう。

参考資料
BBC NEWS JAPAN 土星の衛星に「生命育む環境」
NATIONAL GEOGRAPHIC 土星の衛星エンケラドスに生命育む素材

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