どうしても洋菓子を卒論テーマにしたいあなたへ(前編)

2016-03-13

卒業論文を書くにあたって最初に行うことはテーマ設定です。
そこで決めたテーマによって卒論の難易度が大きく変わってきます。
単純に考えれば、簡単に書けそうなテーマを選ぶと卒論を書き上げることができる確実性が高まります。
とはいえ、「どうしても自分のこだわりのあるテーマで卒論を書きたい」という強い意志をもっている人もいるでしょう。
そこで今回の記事ではそうした一風変わったテーマで卒論を書くときのコツを紹介したいと思います。

例えば、「洋菓子」を卒論のテーマに据えるとどのような書き方になるのかを考えていきましょう。
執筆手順の概観を示すと次のようになります。

仮説設定→用語の定義→仮説検証→結論

ここで第一に考えなければならないのは仮説設定です。
どんな卒論でも最初の段階で仮説を立てることでより有意義なものとすることができます。
仮説を立てることの意義については、次のような見解があります。

   イシューの見極めについては、「こんな感じのことを決めないとね」といった「テーマの整理」程度で止めてしまう人が多いが、これではまったく不足している。実際の検討をはじめてから再度「イシューは何だろう」と考えているようではいくら時間があっても足りない。こうしたことを避けるためには、強引にでも前倒しで具体的な仮説を立てることが肝心だ。(安宅、2010年 p.48)

上の引用文での「イシュー」とは本当に追求するべき問題のことです。
このような仮説を前倒しで設定していくような思考法は論文執筆でも効果的です。
洋菓子をテーマにするならば、その歴史や受容のされ方を明らかにするだけではなく、人々の暮らしにどのような変化をもたらしたのかという文化・経済的意義にまで目を配ることで良い仮説が立てられそうです。
例えば、「洋菓子が日本文化に与えた影響」や「洋菓子の普及による経済効果」などがテーマとして有力になります。
そして、前者であれば「洋菓子の台頭は日本文化を衰退させるだけでなく、新たな革新をもたらす契機となった」というような仮説が、後者なら「洋菓子の普及による経済効果は日本の食品産業全体においても大きなウエートを占めている」というような仮説が立てられます。
このように、少々強引にでも仮説を立ててみると、論文で検証すべき課題が明らかになります。
先行研究に目を配りながらまだ研究されていない部分を選ぶとより論文を意義あるものにすることができます。

さて、次に取り組むのは用語の定義です。
例えば洋菓子のケースでは、日本洋菓子協会連合会によると「日本のお菓子と思われているカステラ、コンペイトウ、カルメ焼き、ボーロなどのルーツはヨーロッパにあります」とあります。
このような形で、洋菓子という言葉が指し示す内容を押さえることで、その後に続く議論を明確化することができます。
また、洋菓子が日本に入ってきたのは16世紀ごろのことですが、日本での本格的な洋菓子生産が始まったのは江戸時代末期以降のことです。
この時期に日本に多くの外国人が滞在するようになり、洋菓子需要が拡大していました。
さらには、「洋菓子といえば、主にヨーロッパから船で運ばれてくるものばかりで、暑さの厳しいインド洋ではチョコレートが溶けだすなど、輸送は決して容易ではありませんでした」(上島珈琲店)という事情もあり日本での洋菓子生産が取り組まれるようになったのでした。

今回の記事では、論文執筆の最初のステップである仮説設定と用語の定義について説明してきました。
仮説検証と結論の書き方は次回の記事で説明します。

参考文献:
安宅和人、2010年『イシューからはじめよ』英治出版
社団法人 日本洋菓子協会連合会「『日本洋菓子史』を読む」
http://www.gateaux.or.jp/g/dictionary/his01.html
上島珈琲店「WE LOVE SWEETS! ~港町神戸と洋菓子文化~」
http://www.ucc.jp/enjoy/column/column.php?cc=46&newwindow=true

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