ベーシック・インカムを卒論のテーマにしたい!
今回の記事では、ベーシック・インカムを題材とした卒論の骨子をご紹介します。
背景-生活モデルの変容
かつての日本社会を形容した「一億総中流」という言葉が消失し、新たに「格差社会」という言葉が台頭する中で、普通に働き普通に稼ぐという生活モデルも当たり前のものではなくなってきました。
すなわち、中流生活の自明性が突き崩され、安定した暮らしを手にしたいならば従来以上の技量と努力あるいは運までも要求されるようになったのが現代の社会だと言えるでしょう。
その背景には、1990年代のバブル崩壊、2000年代後半の経済危機を経て雇用が流動化していることがあります。
正規社員の数が次々に減らされる一方で、非正規雇用や派遣雇用が増大していきました。
こうした不安定な雇用の下で働く労働者が被る問題は、収入が少なく不安定だということだけではありません。
それに加えて、低収入ゆえに国民保険や年金の供出が滞り、将来的な給付を満足に受けることができないといった問題も生じています。
また、生活保障制度の受給基準以上には稼いでいるものの決して楽ではない生活を送っている人々も多数存在しています。
“先進国”日本では、絶対的貧困の問題がクローズアップされることはかなり少なくなったかもしれませんが、所得格差の拡大とそれに付随する問題の生起により相対的貧困という課題が新たに浮かび上がっています。
ここで注目すべき問題は、流動的な雇用体制により、社会保障制度から抜け落ちる人々が生まれているということです。
すべての国民の健康で文化的な生活を生涯にわたって保障するはずの制度が、その加入要件を雇用によって制限されているというのは矛盾を抱えたものとなっています。
この問題を解決する方策として注目されるのが、ベーシック・インカムの導入です。
考察-ベーシック・インカムに対する三つの疑問と反論
詳細な説明は割愛しますが、ベーシック・インカムとは無条件に生活資金を給付する仕組みのことです。
ここでは、ベーシック・インカム導入の是非に関して想定される三つの疑問に対して反論してみます。
ベーシック・インカムに寄せられる批判のうち最も根本的なものは、「本当に実現可能か」というものでしょう。
これに対して、ベーシック・インカムは一国内の所得の格差を全体的に均すだけで、全国民の所得の総額は変わらない、という回答が可能です。
つまり、ベーシック・インカムの導入によって新たな富が生まれるわけではない以上、従来と比べて配分の仕方を変えるだけにすぎません。
次に考えられる疑問は、「高所得者にも支給しなければならないのか」というものです。
ベーシック・インカムの導入によって所得配分のあり方を改めると、高所得者はむしろ総所得額が減少します。
それゆえ本当に問題となるのは、高所得者に支給することではなく、いかにして所得の減少を納得してもらうかということです。
最後に、「人々が働かなくなるのではないか」という疑問について検討しましょう。
まず主要な財源を消費税式にすることで、供出を行わず受給のみを享受するフリーライダーは生じないということを確認する必要があります。
また、現状でも働けていない人がいることを見落としてはなりません。
あくまで、貧困ゆえに劣悪な環境下での労働に従事するという問題を解消できるという点がこの制度の利点であるはずです。
さらに、ベーシック・インカム導入以前の生活水準を維持するには従来同様に働く必要があることにも注意が必要です。
おわりに
以上では卒論の骨子の一例をご紹介しましたが、当然この議論内容に対する批判も様々な角度から可能です。
上の考察部分のように予想される疑問とそれに対する反論を積み上げていく作業こそが、研究の醍醐味と言えるでしょう。
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おすすめ参考文献
山森亮、2009年『ベーシック・インカム入門』光文社新書