観光業の新潮流を掴むための視点

2016-04-06

最近の訪日外国人の動向として、中国からの観光客による「爆買い」が注目を集めています。
「爆買い」とは、貸切バスで商業施設を訪れて大量の商品をするような観光のあり方を指しており、日本経済への貢献が期待されています。

こうした動向はメディアや研究者からも注目されており、研究報告書でも次のように論じられています。

「今年は日本各地の観光地で異変が起きている。2月後半の中国の春節(旧正月)と3月下旬から4月上旬の日本のお花見の時期に、これまででは考えられないほど多くの中国人観光客が日本を訪れた。お土産を大量に購入する様子は連日テレビや新聞・雑誌等で報道され、「爆買い」という流行語まで生まれた」(瀬口 2015)

「爆買い」はその購買形態だけでなく、金額面でもインパクトのあるものです。
同報告書は以下のように続けています。

「今年の1~3月に日本を訪れた中国人一人あたりのお土産購入額は17万円を超え、数万円程度の他国の観光客をはるかに上回る。この衝撃的な出来事を通じて、日本の製品・サービスに対して中国人が高い評価と旺盛な購買意欲を持っていることが一気に日本全国に知れ渡った。一部に中国人観光客のマナーの悪さを批判する声もあるが、それ以上に日本の製品やサービスを爆買いする裕福な中国人を歓迎するムードが勝ったのではないだろうか」(瀬口 2015)

このように、中国からの訪日客がフォーカスされていますが韓国や台湾のような他地域からの観光客の購買行動とはどのように異なっているのでしょうか。

まずは韓国から見ていきましょう。
韓国からの観光客は中国・台湾に次ぐ大きな観光消費額を誇っており、見逃すことができません。

他の地域とは異なる韓国からの訪日客の特徴は、滞在期間が短いことです。
特に3 日間以内の短期滞在者が多くなっており、滞在日数の短さが際立っています。

しかし、これは訪日するリピーターの数の多さの裏返しでもあります。
韓国からの観光客は訪日回数20 回以上のリピーター比率が他地域からと比較して著しく高くなっています。
そのため、滞在期間が短いからといって観光業における重要性が低いことは決してありません。

次に台湾からの訪日客について見ていきましょう。
台湾からの観光客は、女性の割合が高いことが特徴です。
その割合は56%となっており、他地域と比較して高い数字となっています。
また滞在日数は4-6日が最も多く、韓国ほどではないものの短期間の滞在が中心です。

台湾からの訪日は、チャーター便などを利用したパッケージツアーを利用するケースが全体のおよそ7割となっています。
この点については、旅行目的のうち「観光・レジャー」が8割を超えていることとも関係しているようです。

以上のように韓国や台湾からの観光客の特徴を見ていくと、中国からの観光客と類似点・相違点がともに存在していることがわかります。
その際、消費金額や滞在日数、訪日目的などの視点を設けることで比較が容易になります。

このように比較対象と比較項目を設定することで研究対象の本当の姿が見えてくるものです。

参考文献:
瀬口清之、2015年「中国人旅行客「爆買い」の勢いはさらに強まる」キャノングローバル戦略研究所
http://canon-igs.org/column/network/20150528_3128.html
観光庁、2014年「訪日外国人の消費動向 訪日外国人消費動向調査結果及び分析 平成26年における訪日外国人の消費動向」
http://www.mlit.go.jp/common/001084275.pdf
金玉実、2009年「日本における中国人旅行者行動の空間的特徴」『地理学評論』82(4)

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