LCCで卒論を書きたい!

2018-10-22

経営学の分野では自分が気になっている産業や日頃から関わりのある業界をテーマにして卒論を書くことが可能です。

今回ご紹介するのは、LCC(格安航空会社)がどのようにして生まれ、展開しているのかをテーマにした論文の書き方です。

定義

まずは定義を確認しましょう。傍士清志「わが国におけるLCCの台頭と空港政策」を参考にしながら整理すると、LCCとは「Low Cost Carrier」の略称であり、それが意味するところは、「格安航空会社」となります。それに対し、従来からの航空企業は幅広いサービスを提供することから、FSA 「Full Service Airline」と呼ばれます。あるいは、従来型のビジネスモデルで展開される点に注目し、レガシーキャリア「Legacy Carrier」という言葉で既存の航空会社を表現することもあります。

LCCの仕組み

○短・中距離路線

欧米では航空自由化政策が本格的に動き出したのは1990年代のことでした。この流れを受けて世界各国でLCCが誕生しました。LCCが運航する路線は、主に短距離路線や中距離路線となっています。この背景には、LCCが米国に誕生したときに大手の航空会社の航空便を競合として設定するのではなく、バスに対抗するというコンセプトを定めたことがあります。

○短時間のフライト

LCCの運航路線は一般的に片道4時間以内とされています。そのため、多少狭い座席であっても乗客がそれほど苦痛を感じずに済み、また比較的短時間で到着するため機内食やドリンクなどのサービスを行わなくても乗客が我慢できる点もコストダウンの要因となりました。

○効率的な運航スケジュール

LCCの利点をさらに挙げると、航空機が空港に到着してから次の目的地へと出発する間の待機時間を短くすることで、機体をより効率的に活用することができます。先ほど指摘したように、LCCでは基本的に機内食のサービスがないため、空港で積み込まなければならない資材が少なくなり、わずかな折り返し時間で運行することに貢献しています。

○直行便の採用

LCCの運航形態は、「ポイント・トゥー・ポイント」による直行便が採用されており、大手の航空会社での「ハブ・アンド・スポーク」という運航形態とは異なっています。

LCCでは二都市間の直行便運航が採用されるため、他の便の遅れなどの影響を極力受けない仕組みとなっています。

日本への進出

日本でのLCC誕生のための土壌が整えられたのは2000年前後のことでした。1998 年に航空業界への新規参入が認められる方針が固められ、2000年の改正航空法によって事前届出制の運賃制度が確立、2008 年には国際線運賃の下限が撤廃されるという展開が見られました。

この流れの中で、1998年にスカイマーク・エアラインズ(現スカイマーク)が参入し、その後も北海道国際航空(エア・ドゥ)、スカイネットアジア航空、スターフライヤーなどの新興航空会社が続きました。

こうした新興航空会社は従来からのJALやANAと比較して安い運賃を設定しており、広義にはLCCと呼ばれます。しかしながら、航空券の主要販売チャネルが既存大手と同じ旅行代理店であること、羽田空港を路線の中心にしていることなどは、海外のLCCの特徴と異なっていることも確かです。

おわりに

以上ではLCCの基本的な特徴と日本での展開を概観してきました。その上で、論文の内容を深めるときには様々な方向性が考えられます。

例えば、「海外のLCCと日本のLCCの比較」「LCCがシェアを獲得できた要因」「LCC間の競争の分析」などが挙げられます。

まずは先行研究に目を通して大枠を把握し、その後各論の部分を深めていくと着手しやすくなるでしょう。

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おすすめ参考文献

大島愼子、2015年「航空自由化とLCC の展開」『筑波学院大学紀要』10

傍士清志、「わが国におけるLCCの台頭と空港政策」国土技術政策総合研究所

花岡伸也、2012年「到来したLCCの波とわが国の行方」『ていくおふ』131

花岡伸也、2015年「LCC の本質と国内LCC の将来」『ていくおふ』137

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