イスラム教の卒論ってどう書けばいい？
「イスラム教で卒論書かなきゃいけないけど、とっかかりにくい」「イスラム文化に興味があるんだけど、いざ書いてみると難しい」国際関係や政治関係の学部やゼミの方がイスラム教をテーマに選ぶケースがあります。あなたもイスラム教をテーマに卒論を書こうとしているのであれば思うように進まないことが往々にして出てくるでしょう。
そこで、今日はイスラム教を卒論として書く上で、知っておくと筆が進むことを2つお伝えします。
1 賭博は「悪魔の業」？賭博禁止から見るイスラムの価値観
イスラム社会は他の社会と比べて賭博に対して厳格な方針をもっています。
イスラム教ではその基本的な考え方が教典であるコーランに基づいていますが、賭博の禁止もコーランの記述によって定められています。
コーランの第5章90節では「酒、賭け矢、偶像と占い矢は忌み嫌われる悪魔の業である。これを避けなさい」と書かれています。
ここからは、飲酒や偶像崇拝、占いと並んで賭博が禁止されていることがわかります。
それでは、なぜイスラム教はこのように賭博を禁止しているのでしょうか。
「悪魔の業」とまで言って強く禁止しているのには、イスラム教の根幹にかかわるような大切な理由がありそうです。
この疑問を突き詰めていくと、一つのテーマとして卒論を書くことができるでしょう。
そもそもコーランとは預言者ムハンマドを通して神がアラビア語で語った言葉であり、それを厳格に保持しているものです。
本来はコーランの内容を記憶している人が朗読して広めることで人々の間に定着していったものでした。
しかし、それでは伝承者の記憶違いによって間違いが生じてしまう恐れがあります。
そこで、ムハンマドが語った内容を誤りなくそのままにアラビア語で書き起こして保存したものが現在のコーランです。
この前提を踏まえると、コーランの正当性は次のように説明できます。
預言者ムハンマド （モハメット）も正しい。彼はアッラーの神のことばをねつ造したのではなく、作為的な付加や削除もせず、神から預かったものをそのまま、ありのまま正直に人へ伝えた。この前提で、イスラーム教は今日まで成り立っている（鴨志田、2002 p.26）
つまり、コーランとはすなわち神の言葉であり、それに従うことはイスラム教社会では絶対の掟となります。そこで賭博が禁止されているため、そうした行為に手を染めることはタブーとなっているのです。
2 イスラムならではの長期的視野
ここからは、さらに一歩踏み込んで考察していきます。
イスラム教では賭博に関する規定と同様に、利息の禁止、宗教的に禁止された商品と生産への投資の禁止、不確実性を伴う取引の禁止も定められています。
これは、仕事もせず、努力なしに金を得る機会をつくるものを禁止するコーランの教えが背景にあるのです（水島、2008）。
こうした定めが設けられている理由として、イスラム教には次のような世界観があります。
イスラーム世界においては、人間の知識を向上させることによって不確実性を減少さることが可能であり、その結果、イスラームの価値観の原則を維持しながら、人々の利益のために禁止規定の運用上の枠を変化させ、新たな事態に対応してゆくことが可能であり、現在の問題もやがては解決されてゆくことになる、と考えられていることが伺える（水島、2008 p.99）
イスラム教では、アッラーの偉大性をもって将来的に自分が救われるという思想があります。
そのため、短期的な利益でなく長期的な救済が求められるようになっているのです。
賭博行為は短期的に利益を出すことができても、長期的に見ると社会の安定性を脅かす危険性があります。
また賭博に大きな不確実性が介入していることもイスラム倫理に反していると見做されるのです。
不確実性を減少させていくことによって社会を豊かにしようとするイスラム教にとって、賭博のような行為に従事することは教えに真っ向から対立してしまうことになります。
学術論文を読みながらこのように異文化への理解を深めるのも、卒論執筆の楽しみの一つでしょう。
3 おすすめの参考文献
水島多喜男、2008年「株式市場の「ギャンブル性」とイスラーム金融思想との整合性をめぐって」『徳島大学総合科学部』21
鴨志田恵一、2002年「イスラーム教啓典『コーラン』の現代性（上）－預言者ムハンマドに関する一記者の考察」『朝日総研リポート』155
おわりに
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