海外研究で卒論を書くには?

2018-07-15

気軽に海外旅行ができるようになった時代です。海外のことに興味を持っている大学生も多いのではないでしょうか?

卒論の題材を自分の興味のあることの中から探そうと思ったとき、「海外のことをテーマに据えたい」と考える人もいるでしょう。そこで、今回の記事では海外研究で卒論を書くためのアドバイスをお伝えします。

研究テーマを設定する

例えば、トランプ政権について興味を持っているとしましょう。トランプ政権を題材にするにしても、その誕生の背景だったり、個別具体の政策だったり、様々な論点が設定可能です。その中でも一番自分が気になる部分を掘り下げていくと、論文として探究する価値のある問題を発見できるでしょう。

テーマを学問的文脈上に位置づける

仮に、トランプ政権の誕生について論文を書くことになったとします。そのときに、単純に大統領選挙への立候補から当選までの流れを時系列に整理するだけでは論文にはなりません。もちろん、研究の見通しを立てるために必要な作業ではありますが、あくまで事前準備に過ぎません。

論文を書くときに最も大切なことは、「どの学問的文脈の上に載せるか」です。トランプ政権の問題であれば、政治学の観点からポピュリズム政権の誕生という見方をすることもできますし、政権獲得プロセスにおける広告の方法や他候補との差別化という観点から見ることもできます。

それでは具体例を挙げてみましょう。

 

2016 年に世界中の関心を集めたのが、アメリカ大統領選における「トランプ現象」であった。当初泡沫候補の一人と目されていたドナルド・トランプは共和党の大統領候補となり、選挙当日まで当選が有力視されていた民主党候補ヒラリー・クリントンを破り、第45 代アメリカ大統領となった。(山腰 2017:p.21)

 

このような書き方では時系列の流れを記しているだけで、学術的にどのような意味を持っているのかが明確ではありません。

それでは次の文章はどうでしょうか?

 

一連の支持者たちは選挙後、メディアによって「隠れトランプ支持者」と名づけられた。(中略)このメディア表象においては、支持者たちの多様性は消去され、一枚岩の同質的な集団として意味づけられた。このことは、ポピュリストの政治コミュニケーションだけではなく、マス・メディアもまた、ポピュリズムを支える統一的な主体のポピュリズム政治における「民衆」と「大衆」意味構築に非意図的であれ、結果的に関与していることを指し示している。(山腰 2017:pp.22,23)

 

このように「ポピュリズム」という観点から事例を分析していくと、その研究にどのような意味があるのかを示すことができます。

自分の研究をどの学問分野の上に載せていくのかを考えるときに重要なのが、先行研究を読み込むことです。これには二つのメリットがあります。

  • 自分の関心のあるテーマがどのような学問的文脈と関連するのかがわかる
  • 何が明らかになっていて、何が明らかになっていないかがわかる

論文の最後には、研究の意義と今後の課題が書いていますね。先行研究を読む中で、自分が明らかにしていきたい「今後の課題」が見つかったら、論文の構想を固めていくチャンスです。

おわりに

自分の興味のあるテーマで卒論を書き始めると、先行研究を読み込む中でそれに影響されて、最初自分が扱いたかった問題が何なのかわからなくなってしまうことがあります。そうした場合に備えて、自分が考えたことは簡単にでもいいのでメモに残しておくようにしましょう。そうすると、研究が行き詰ったときに初心に立ち返って新たな切り口を得たり、論点を深めたりするときの手掛かりになります。

卒論は何度も立ち止まって悩みながらの作業となることが多いです。それを乗り越えるためにも、自分が心から興味のあるテーマを選び、学問的文脈にうまく載せることを意識するといいでしょう。

おすすめ参考文献

山腰修三、2017年「ポピュリズム政治における「民衆」と「大衆」-批判的コミュニケーション論からのアプローチ-」『メディア・コミュニケーション』67

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