「オムニチャネル」って何?

2018-07-24

今回取り上げるのは「オムニチャネル」での卒論の書き方です。

そもそもオムニチャネルって何?という人も多いと思います。

こうした新しく出てきた概念に注目して卒論を書くときの注意点をご紹介します。

定義の確認

やはり重要なのは定義の確認です。特に具体的なイメージの湧かない題材を扱うときは、複数の資料から引用するのがよいでしょう。

例えば、近藤(2018)ではオムニチャネルを「すべて(オムニ)のチャネルを統合し、消費者にシームレスな買い物経験を提供する顧客戦略」と定義しています。

ここでは、「すべてのチャネルの統合」「シームレスな(垣根の低い)買い物経験」という二つのポイントが出てきていますが、これだけではまだあまり具体的ではありません。

それでは、別の先行研究での次の定義はどうでしょうか。

 

『オムニチャネル』とは、実店舗とネット店舗の融合により、あらゆる販売チャネルを統合し、シームレスな販売体制の構築によって、顧客がすべてのチャネルから同じように商品の購入、サービスの提供を受けられる環境を実現することである。オムニチャネル化社会では、顧客は実店舗、ネット店舗、テレビやカタログでの通販、SNS など、すべてのコンタクトポイントから同質の商品・サービスの提供を受けることができる。(熊倉 2015:p.48

 

この定義では、同様のポイントを指摘しながらも具体例を挙げながらの説明がされており、より理解しやすい形になっています。従来から広く使用されている用語の定義を確認するときは、簡潔な説明で十分な場合も多いですが、オムニチャネルのようにまだ普及しきっていない概念の説明では、そのイメージが読み手に伝わるように丁寧に定義付けを行うのがよいでしょう。

 

論点の設定

以上では定義の確認を行ってきましたが、それだけでは卒論になりません。定義付けをした概念を用いてどのようなことができるか、どのような可能性があるか、といった内容の議論が必要になります。

例えば、オムニチャネルを活用して過疎地域で暮らす高齢者向けのサービスが実現可能であるかもしれません。

それと関連して、高齢者の情報端末使用について次のような状況があります。

 

音楽や映画産業におけるコンテンツ制作のデジタル化が進み、従来のパッケージ販売からインターネットを介した配信販売へとビジネスモデルが変わってきた。こうしたコンテンツの流通方式の変化により容易にデジタル化されたコンテンツを入手し、何時でも何処でも音楽や映像を楽しむことが可能となった。これに伴って開発された携帯型の再生機器は購入者層を若者としたものが一般的であり、再生機器でコンテンツを利用するにはPC が欠かせないことも相俟って高齢者にとっては非常に使い難いものとなっている。しかし、少子高齢化社会を考えると、今後は販売層を拡大するために若者だけでなく高齢者も対象とした新たなサービスや機器の開発が求められることになる。(堀井 2012:p.33

 

また経済産業省は過疎地域での買い物が困難であるという問題に対して、次のように提言しています。

 

イノベーションによる課題克服

  • ITを活用した効率化や既存インフラの新たな活用策などにより、運営コストを削減。
  • ネットにより来店しない客をも取り込むなど新しい需要の開拓。(経済産業省 2010:p.2

 

これらで指摘された内容を手掛かりにすると、オムニチャネルを用いて新しく何ができるのかを構想しやすくなるでしょう。

このように、卒論とは先行研究を読み込んでヒントを探しながら進めるものです。

その中で自分の知らなかった論点を見つけることで、卒論での議論を深めていくことができます。

 

おすすめ参考文献

熊倉雅仁、2015年「購買プロセスの変革とオムニチャネルシステム構築の理論的考察 : 購買行動の変革とオムニチャネル化社会の到来への予見」『高千穂論叢』50(2)

経済産業省、2010年「地域生活インフラを支える流通のあり方研究会~地域社会とともに生きる流通~報告書概要」

近藤公彦、2018年「日本型オムニチャネルの特質と理論的課題」『流通研究』21(1)

堀井千夏、2012年「高齢者のためのタッチパネル操作におけるカラーキャリブレーション手法」『摂南大学経営情報学部論集』20(1)

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